当ギャラリー常設展「夢路をたどる」の作家、蛯子睦月さんに伺ったお話を元にコラムをお届け。
まずは、そもそもの個展の位置付けや向き合い方についてのお話です。
作品があるから個展をやる、でいい
特定のギャラリーに所属したり、提携したりして、定期的な個展や展覧会開催のために作品を作るタイプの作家さんがいる一方で、そうでないタイプの作家さんもいます。
後者のタイプの作家さんは、日々を自然に過ごす中で創作活動に取り組み、自然に生まれる作品が溜まって来たら、個展をやりたくなる、という感じではないでしょうか。
個展をやったからといって、それだけで何かのステータスになることはないですし、作家としてステップアップするようなこともありません。作品が積み上がってきたからといって、必ず個展を開かなければいけないということもありません。
基本的には普段の創作活動があり、作品があるから個展をやる。それが自然なスタンスだと思います。
もちろん、定期的な個展、展覧会の開催ありきで創作するためのリズムを作ったり、創作に向き合うやり方もあるので、それが合う人ならスケジュールや計画を立てるのも良いでしょう。
創作し続けている証にはなる
美術や工芸系の高校や美大といった進路を選んだ人でも、必ずしも創作にまつわる仕事に就けるとは限らないし、作家や職人として生計を立てられる人も多くはないでしょう。よほどの売れっ子でもない限り創作と生活の両立は難しく、生活を選んで創作を諦める人たちも沢山います。
それでも創作し続けている人にとって、個展は大事な活動報告の場にもなるし、作品を創り続けられているという一つの証明にもなるでしょう。
ことさらに個展や展覧会を重視する必要はないし、軽視する必要もないですが、個展はやるたびに喜びや嬉しい発見がある、大切なものである、と言えるのではないでしょうか。