当ギャラリー常設展「夢路をたどる」の作家、蛯子睦月さんに伺ったお話を元にコラムをお届け。
今回は、市井の作家、絵描きとしての日々の過ごし方、創作との向き合い方についてのお話です。
「描くこと」に対してアンテナを立てておく
強迫観念的に「いつまでに描かなきゃ」とか、業務的に「どのぐらいの頻度で描かなきゃ」というのではなく、いつでも「描くこと」を意識して生活する。ただ、意識しすぎるのも良くないので、「描くこと」に対してアンテナを立てておく、というくらいの感じで。
日々、本を読んだり、誰かの絵や作品を観に行ったり、自然や動物、家族と向き合ったり、描くための着想やきっかけを得られればと散歩してみたり。自分に正直にあるがままに過ごして、自分の気持ちと素直に向き合い、描きたくなったら描くし、描けなかったら無理に描かない。
それでも、当たり前のように描いている。当たり前のようなアウトプットがあるから、当たり前のようなインプットもある。基本的にはその繰り返し、というのが作家としての日々の過ごし方の一例になるかもしれません。
ギャラリー巡りや作品鑑賞も、日課の一つに
描いていない時間、絵と向き合っていない時間も、大抵の時間は描くために費やされていることでしょう。誰かの作品を鑑賞するために馴染みのギャラリーや各地の美術館を回ることもあるし、個展や展覧会を見て、作品の飾り方や照明の当て方を研究することもある。
いつか個展をやってみたいと思うギャラリーの場合は、自分ならどこにどう飾るかもシミュレーションしながら回るのも、とても良い勉強になるでしょう。
誰かの作品や展示の仕方を客観的に見て、自分の知見やセンスを磨いておくと、自分の番が来た時にも非常に有用だし、定期的にギャラリーを巡ってオーナーさんやスタッフの皆さん、主催している作家さんと仲良くなっておくのも、回り回って何かの役に立つことがある。
自分が何かを作るアウトプットも自然な日課にしつつ、自分から何かを得るインプットを日課にしておくのも、創作活動をするにあたっては大事なことだと言えるのではないでしょうか。